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元中日ドラゴンズ吉見一起氏「アゲインボール」を生産する夢工房翔裕園を訪問
コラム, 選手の活動

元中日ドラゴンズ吉見一起氏「アゲインボール」を生産する夢工房翔裕園を訪問

“アゲインボール”とは、埼玉県の障害福祉サービス事業所・夢工房翔裕園で障がいを持った方々が修繕し、再生させた硬式野球ボールのことだ。破損して使えなくなった硬式球を全国のチームから集め、その芯を再利用して革を縫い合わせる。その際に発生する修繕費や購入費が障がい者の方々の工賃となり、就労支援に繋がっている。

元中日ドラゴンズの吉見一起氏は、現役時代にアゲインボールを成績に応じて購入し、学童野球のチームに寄贈する「アゲインボールプロジェクト」を実施。長引くコロナ禍で引退後の施設訪問が延期されていたが、この度初めての視察が実現した。

吉見氏は、現役時代の2016年に「アゲインボールプロジェクト」を発足。すでにベテラン選手になっていたその当時、プロ野球選手として現役のうちに何か世の中に貢献できることはないかと考えていたところ、アゲインボールの存在を知りアクションを起こすことに。障がい者の就労支援と野球振興が同時にできることに魅力を感じたという。

「野球をやっている子どもたちにアゲインボールを使ってもらうことで、道具を大切にする心を育んでもらえる。そして、それが障がい者の就労支援にも繋がるという素晴らしい取り組みだったので、少しでも応援できればと思い行動を起こしました。発足当時はまだ現役だったので、プレーを通じてこの活動を知ってもらえればと思い、成績に応じた支援をすることにしたんです」(吉見氏)

プロジェクト初年度の2016年オフは背番号19にちなんで190ダースのアゲインボールを購入し、一般財団法人「日本リトルシニア中学硬式野球協会東海連盟」を通じて東海エリアのチームに寄贈。2017年以降は勝利数に応じて購入し、東日本豪雨災害で被災した同協会関西連盟中国支部のチームに寄贈するなど活動の枠を広げていった。

2020年に引退してからは野球解説者やYouTuberとして活躍する吉見氏だが、成績連動型支援を終えた今、次にできることはその発信力を活かしたアゲインボールの普及活動だ。その第一歩として引退直後に作業現場の見学を計画していたが、コロナ禍によってなかなかかなわず、今年になってようやく実現することとなった。

6月某日、吉見氏は自宅のある愛知から埼玉まで足を延ばし、夢工房翔裕園を訪問。施設利用者やスタッフの歓迎を受け、さっそくアゲインボールの作業現場を見学した。

同事業所では、革を張り替えて再生させるアゲインボールのほかに、革をそのまま再利用し糸のほつれのみを直すエコボールの修繕も行っている。こちらも古くなって糸がほつれたボールが全国の硬式野球チームから届き、修繕ののち各チームに返却され、その修繕費が施設利用者の自立支援に充てられる。

エコボールの作業風景を見学する吉見氏。

吉見氏は、施設利用者からレクチャーを受けてアゲインボールの縫合に挑戦してみることに。裁縫は今までやったことがないらしく最初は苦戦していたが、3針4針と針を入れるごとにだんだんとコツを覚えた様子。それでも「実際やってみると見ているよりも大変。力もコツも必要ですね。皆さん、本当に器用なんだなと思いました」と感心していた。ボールの縫い目は1球108針だが、施設利用者はだいたい1時間ほどで完成させてしまうという。

レクチャーを受けながらアゲインボールの縫合に挑戦。

作業を見学した後は、質問タイム、サイン会、記念撮影、キャッチボールなどを行い、施設利用者との交流を楽しんだ吉見氏。「今回初めて訪問してみて、皆さんとても明るいなと感じました。質問タイムの時も生き生きと質問してくださって、前向きな方ばかりだな、と。お会いできてよかったですし、この取り組みがもっと広がればいいなと改めて感じました」と語っていた。

この取り組みは野球というスポーツがあるからこそ成り立っており、大事なのはこれを野球界でいかに広め、継続させるかということだ。そのためにも、吉見氏に続くプロ野球選手の支援、そして硬式野球チームの理解・協力が必要だ。

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